退職後1年間の資金計画が重要な理由
退職後は、毎月の給与という「定期収入」が途絶えます。その一方で、住居費や生活費、税金・保険料などの支出は止まりません。
特に注意したいのは、退職から半年~1年後にまとまった税金・保険料の支払いが発生する点です。これを想定せずに資金を使ってしまうと、後から大きな負担に感じることになります。
次章では、まず退職後1年間にかかる「生活費の目安」を具体的にシミュレーションしていきます。

「先に全体像を知っておくと、資金計画がグッと立てやすくなります!」
生活費の目安とシミュレーション
まずは、退職後にかかる1年間の生活費を具体的に把握しておきましょう。独身の方と家族がいる方では必要な生活費が大きく変わります。
以下はモデルケースとして、30歳独身と35歳妻子持ち(配偶者・子1人)の場合の目安をまとめました。
✅ 生活費の目安(1か月・年間)
【前提条件】
・都市部在住
・自家用車なし(公共交通機関利用)
・家賃は管理費込み・駐車場なし
① 30歳 独身一人暮らし
項目 | 月額目安 | 年間目安 |
---|---|---|
住居費 | 90,000円 | 1,080,000円 |
食費 | 40,000円 | 480,000円 |
水道光熱費 | 12,000円 | 144,000円 |
通信費 | 10,000円 | 120,000円 |
その他生活費 | 35,000円 | 420,000円 |
合計 | 187,000円 | 2,244,000円 |
② 35歳 妻子持ち(配偶者・子1人)
項目 | 月額目安 | 年間目安 |
---|---|---|
住居費 | 156,000円 | 1,872,000円 |
食費 | 70,000円 | 840,000円 |
水道光熱費 | 18,000円 | 216,000円 |
通信費 | 15,000円 | 180,000円 |
その他生活費 | 50,000円 | 600,000円 |
合計 | 309,000円 | 3,708,000円 |

「生活費は固定費が多いので、しっかり確認しておくのが大事です!」
👉 税金・保険の負担はこちらで確認:
退職後の住民税・所得税の支払い方法
税金・保険・年金の負担を整理する
退職後も、前年収に応じた税金・保険料の支払いが続きます。特に国民健康保険や住民税は負担が大きくなることが多いので、あらかじめ資金を準備しておくことが重要です。
ここでは、年収500万円(単身)と年収700万円(妻子持ち)のモデルケースを紹介します。
✅ 税金・保険の負担イメージ
【前提条件】
・前年収を基準に計算(自治体平均値)
・①単身世帯
・②妻子(配偶者・子1人)扶養
① 年収500万円(単身世帯)
- 住民税:約250,000円
- 国民健康保険:約400,000円
- 国民年金:約200,000円
② 年収700万円(妻子持ち)
- 住民税:約450,000円
- 国民健康保険:約650,000円
- 国民年金:約200,000円
※保険料は自治体・扶養人数により変動します。概算目安として参考にしてください。

「前年収が高い人ほど、退職後の税金・保険料の負担が大きくなるので注意しましょう。」
👉 健康保険・年金の詳しい比較はこちら:
退職後の健康保険料を安くする方法
失業保険・給付金の収入を把握する
退職後は収入がなくなる一方で、失業保険や給付金を活用することで一定期間の生活費を補填できます。特に失業保険は手続きをすれば、早ければ退職後1か月程度で最初の振込を受けられます。
基本手当の支給期間は原則90日〜150日ですが、年齢や離職理由で変わるため、事前に確認しましょう。
退職理由が会社都合の場合は待機期間が短縮され、さらに早く受給を開始できます。

「失業保険の申請は退職後すぐにハローワークで行いましょう。手続きが遅れると受給も遅れます。」
👉 失業保険の受給条件・金額はこちら:
失業保険の受給条件と金額まとめ
退職後1年の収支モデルケース
ここまでの支出と収入を踏まえ、1年間の資金の動きをシミュレーションします。退職後に収入がゼロの状態と、副業で一定の収入を得られた場合では、年間の資金残高が大きく異なります。
下の表は、月収0円+失業給付3か月と、月収15万円の副業収入が1年間続くケースを比較した収支シミュレーションです。
✅ 退職後1年間の収支シミュレーション
【前提条件】
・年収500万円で退職
・30歳単身世帯
・月収0円(副業なし)
・失業給付90日分(3か月分)1月~3月に支給
・生活費+税金・保険は固定額とする
項目 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年間合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生活費 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 3,000,000 |
税金・保険 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 840,000 |
失業給付 | 50,000 | 50,000 | 50,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 150,000 |
収支差額 | ▲270,000 | ▲270,000 | ▲270,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲320,000 | ▲4,530,000 |
✅ 副業月収15万円パターン|退職後1年間の収支
【前提条件】
・年収500万円で退職
・30歳単身世帯
・毎月15万円の副業収入あり
・失業給付なし
・生活費+税金・保険は固定額
項目 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年間合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生活費 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 250,000 | 3,000,000 |
税金・保険 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 70,000 | 840,000 |
副業収入 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 150,000 | 1,800,000 |
収支差額 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲170,000 | ▲2,040,000 |

「副業収入があると、毎月の資金繰りに大きな余裕が生まれます。収支の差をぜひ確認してくださいね。」
👉 退職後に活用できる給付金制度はこちら:
退職後にもらえる給付金まとめ
資金計画を立てるポイントとコツ
ここまでのシミュレーションで、退職後1年間にどれくらいの支出と収入が発生するかイメージできたと思います。
資金計画を立てるときは、以下のポイントを意識しましょう。
- 生活費+税金・保険料の合計を年間単位で把握する
- 少なくとも半年分の生活費を予備費として確保する
- 失業給付・副業収入・補助金などの収入見込みを一覧化する
- 手元資金と比較し、どのタイミングで不足が出るか確認する
副業収入やスポット収入をどの程度見込むかによって、必要な貯金額は変わります。「1か月にいくら必要か」ではなく、1年単位で逆算するのがコツです。

「最初に全体計画を立てておくと、精神的にも余裕が生まれますよ。」
👉 副業・フリーランスの始め方はこちら:
退職後にフリーランスとして独立する手順
退職後の資金計画に関するQ&A
Q. 退職金だけで1年間生活できますか?
退職金は大きな資金源になりますが、生活費・税金・保険料を合計すると想定以上に出費が増えます。税金・保険料だけで年間60万円〜100万円以上かかるケースが多いため、退職金を生活費全額に充てる計画はリスクが高いです。
Q. 副業収入があれば失業給付はもらえますか?
原則として、副業の収入が一定額を超える場合、失業給付は減額または停止されます。副業を始める場合は、事前にハローワークに相談しておくのがおすすめです。
Q. 収入がゼロのとき、税金や保険料は免除されますか?
収入がなくても、前年収をもとに課税されるため自動的に免除にはなりません。ただし、住民税や国民年金については減免制度を利用できる可能性があります。早めに市区町村の窓口に相談しましょう。
👉 退職後の手続きや資金対策はこちら:
退職後の各種手続きまとめ
まとめ|退職後1年を安心して過ごすために
退職後の1年間は、生活費や税金・保険料など出費が大きくなる一方で、収入が不安定になりやすい時期です。
だからこそ、生活費と税金・保険料を合わせた資金計画を事前に立てることが大きな安心につながります。
いきなり完璧な計画を作る必要はありません。今回のモデルケースを参考に、まずは「1年間でどのくらい必要か」をざっくり把握するところから始めてみてください。

「悩んだら一人で抱えずに相談して大丈夫です。一緒にシミュレーションしていきましょう。」
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