退職後に必要な年金・保険の基礎知識
会社を退職すると、それまで会社が手続きしてくれていた社会保険から自分で加入する仕組みに切り替わります。年金や健康保険の手続きは期限が決まっており、放置すると未納や無保険状態になってしまうリスクもあるため注意が必要です。

退職後は会社の厚生年金から国民年金に切り替える必要があるんですよ。また、国民健康保険の手続きも同時に進めるケースが多いです。
社会保険からの切り替え
会社員のときは厚生年金や健康保険が給与天引きされていましたが、退職すると自分で保険料を納める「国民年金」「国民健康保険」に加入する必要があります。退職日の翌日から14日以内に市区町村役所で手続きを行うのが基本です。
公的年金と私的年金の違い
公的年金は国が運営する制度で、原則としてすべての人が加入義務があります。対して、私的年金(iDeCoや小規模企業共済など)は任意で加入し、自分で老後資金を積み立てる制度です。

まずは国民年金の加入手続きを優先しましょう。私的年金はその後、資金計画に応じて検討するのがおすすめです。
👉 退職後の社会保険の手続きはこちら: 退職したら何から始める?社会保険・税金・年金の手続きを徹底ガイド
国民年金の仕組みと保険料
退職後は20歳以上60歳未満の人は原則として国民年金に加入する必要があります。国民年金は老後の基礎年金だけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金の給付も含む制度です。

国民年金の保険料は毎月決まった金額で、収入によって変動しません。2025年度は月額16,980円が標準です。
加入手続きと納付方法
退職後は、市区町村役所で「国民年金の種別変更届」を提出して手続きを行います。保険料は納付書払い・口座振替・クレジットカードなどで支払うことが可能です。口座振替を選ぶと割引が受けられる場合もあります。
免除・猶予制度
収入が少ない場合は保険料の免除や猶予制度を利用できます。免除・猶予を受けるには申請が必要で、承認されると未納扱いにならず、将来の年金額にも一定の反映があります。
免除・猶予の種類 | 対象者の条件 | 免除額 |
---|---|---|
全額免除 | 前年所得が一定基準以下 | 保険料全額免除 |
4分の3免除 | 前年所得が全額免除より高いが一定基準以下 | 保険料の75%免除 |
半額免除 | 前年所得が4分の3免除より高いが一定基準以下 | 保険料の50%免除 |
4分の1免除 | 前年所得が半額免除より高いが一定基準以下 | 保険料の25%免除 |
納付猶予 | 50歳未満で所得が一定基準以下 | 将来追納可(未納扱いにならない) |
学生納付特例 | 学生で所得が一定基準以下 | 将来追納可(未納扱いにならない) |

免除や猶予を使うと将来の年金額は少し減りますが、未納にするよりはずっと良い選択肢です。必ず手続きを忘れないでくださいね。
付加年金で将来受給額を増やす
国民年金を納めている人は、希望すれば付加年金をプラスで納付することができます。これは月額400円を上乗せして支払うことで、将来受給する年金額を増やせる制度です。

付加年金は自営業やフリーランスに人気の制度です。加入すると老齢基礎年金に「200円×納付月数」が上乗せされます。
月400円の上乗せの仕組み
たとえば20年間付加年金を納めた場合、納付額は合計96,000円(400円×12カ月×20年)になります。将来は年額19,200円(200円×12カ月×20年)が一生支給されます。
納付期間 | 付加保険料累計 | 年金増額(年額) |
---|---|---|
10年 | 48,000円 | 9,600円 |
20年 | 96,000円 | 19,200円 |
30年 | 144,000円 | 28,800円 |
40年 | 192,000円 | 38,400円 |
※月400円を納付した場合のシミュレーションです。
メリット・デメリット
付加年金は支給額の増額効果が高く、長生きするほどお得になります。ただし、会社員や厚生年金加入者は利用できず、途中で任意脱退すると上乗せ分は将来受給額に反映されません。

月400円という少額でも老後の安定収入を増やせます。長く続けるほど効果が大きいので、資金に余裕があれば検討してみてくださいね。
iDeCoの基本と節税効果
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で老後資金を積み立てながら、掛金を所得控除できる節税メリットの大きい制度です。退職後も加入でき、税負担を軽減しながら資産形成が可能です。

フリーランスや自営業になった人でもiDeCoに加入できます。掛金は月額5,000円から1,000円単位で設定できますよ。
掛金の設定
掛金は年間で最大816,000円(月68,000円)まで拠出が可能です(国民年金基金加入の有無で上限が変わります)。掛金は全額が所得控除となるため、節税効果が非常に大きいのが特徴です。
税制優遇の内容
iDeCoには3つの税制優遇があります。
- 掛金が全額所得控除(所得税・住民税が軽減)
- 運用益が非課税
- 受け取り時も一定の控除が適用
このため、節税と資産形成を両立できる仕組みとして注目されています。

iDeCoは「節税しながら老後資金を積み立てる」最強クラスの制度です。ただし原則60歳まで引き出せないので、無理のない金額設定にしましょう。
👉 iDeCoの始め方はこちら: iDeCoの始め方と節税シミュレーション|退職後フリーランス必見
小規模企業共済との比較
退職後に老後資金を準備する方法としては、国民年金やiDeCoだけでなく小規模企業共済という選択肢もあります。特に個人事業主・フリーランスはiDeCoと共済を併用することで、効率よく資金を積み立てられます。

小規模企業共済は個人事業主・中小企業経営者専用の制度です。退職金のように一時金を受け取れる仕組みが特徴です。
老後資金準備の選択肢
iDeCoと小規模企業共済はどちらも掛金全額が所得控除の対象です。さらに国民年金を合わせると、公的・私的な制度を組み合わせて老後資金を分散して準備できます。
制度名 | 主な目的 | 税制優遇 | 受取方法 |
---|---|---|---|
国民年金 | 老齢基礎年金を受給 | 社会保険料控除 | 終身年金 |
iDeCo | 老後資金形成 | 掛金全額所得控除・運用益非課税・受取時控除 | 年金or一時金 |
小規模企業共済 | 廃業・退職後の資金準備 | 掛金全額所得控除・運用益非課税 | 一時金or分割 |
並行加入は可能?
iDeCoと小規模企業共済は併用できます。ただし、掛金の上限がそれぞれ設定されているため、家計に無理のない範囲で積立額を調整することが大切です。

並行加入すれば節税効果も大きくなりますが、将来の受取方法や資金用途も考慮して選ぶことがポイントです。
👉 小規模企業共済の詳細はこちら: 小規模企業共済のメリット・デメリットを徹底比較
制度選びのポイント
国民年金、付加年金、iDeCo、小規模企業共済など多くの制度がありますが、すべてに加入するのが正解とは限りません。自分の所得や将来設計に合わせて優先順位を決めることが重要です。

所得が少ない人はまず国民年金の免除や猶予を検討し、無理に積立を増やさないようにしましょう。
所得と家計に応じた選択
安定した収入があるならiDeCoや小規模企業共済で積立を増やすのも一つの方法です。ただし収入が不安定な場合は、生活費を優先して余裕のある分だけ積立を行うのが無理のないやり方です。
将来設計を踏まえた優先度
将来的に厚生年金に加入する予定があるか、フリーランスを続けるかでも選ぶ制度は変わります。長期的なプランを考え、必要に応じて専門家に相談しましょう。

制度は「どれか一つを選ぶ」より「組み合わせて使う」ほうが安心です。ですが収入と支出のバランスが最優先です。無理のない範囲で計画を立てましょう。
よくある質問Q&A
所得が少ない場合はどうすればいい?
所得が一定基準以下で支払いが厳しい場合は、国民年金の免除・納付猶予制度を検討しましょう。免除や猶予を受けても、未納にはならず将来の年金額にも一定割合が反映されます。

免除・猶予の手続きは市区町村役所でできます。収入が増えたら追納することも可能です。
免除中でもiDeCoはできる?
国民年金の保険料を免除・猶予している期間でも、iDeCoの加入は可能です。ただし収入が少ない場合は掛金負担に注意し、無理のない範囲で設定してください。

iDeCoは収入が少ないと所得控除の恩恵も小さくなるので、生活費を最優先に考えましょう。
まとめと次のステップ
退職後は国民年金への切り替えをはじめ、iDeCoや小規模企業共済などさまざまな制度を活用して将来に備えることが大切です。制度それぞれに特徴があるので、収入やライフプランに合わせて選びましょう。

制度の手続きや節税方法は複雑なので、わからないことがあれば専門家に相談するのがおすすめです。
このブログでは、退職後の手続きやお金の備えをテーマに詳しく解説しています。他の記事も参考にしながら、自分に合った制度を見つけてくださいね。

小さな一歩でも早めに始めることが大切です。無理のない範囲で積み立てや手続きを進めていきましょう。