フリーランスの住民税・国保の仕組み
退職後にフリーランスになると、会社員時代と比べて住民税や国民健康保険(国保)の負担を重く感じる方が多いです。給与天引き(特別徴収)がなくなり、自分で納付する必要があるため、「こんなに高かったの?」と驚くケースも珍しくありません。

まずは基本の仕組みを理解して、どのように計算されているのか把握しておきましょう。
住民税の計算方法
住民税は前年の所得に応じて課税されます。所得税と違い「10%程度の均一税率」が特徴です。計算の流れは以下の通りです。
- ①前年の所得から所得控除を差し引く
- ②課税所得に税率をかける(所得割)
- ③均等割(定額部分)を加算する
例えば課税所得200万円の場合、所得割は約200,000円(10%)、均等割は自治体により5,000円前後です。

国民健康保険の計算方法
国民健康保険料も前年所得をもとに計算されます。所得割・均等割・平等割が合算され、自治体ごとに金額が異なります。
おおむね所得が増えるほど保険料も比例的に増えるため注意が必要です。以下に目安をまとめました。
前年所得 | 年間保険料(目安) |
---|---|
100万円 | 約120,000円 |
200万円 | 約240,000円 |
300万円 | 約360,000円 |
400万円 | 約480,000円 |
※自治体や扶養人数により異なります。
このように住民税と国保は前年の所得が大きく影響するため、退職翌年の負担感が強くなりやすいのが特徴です。
👉 退職後の社会保険や税金の手続きについて、さらに詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。
退職したら何から始める?社会保険・税金・年金の手続きを徹底ガイド
退職後に負担が増える理由
「仕事を辞めて収入がなくなるから税金も安くなるだろう」と思っている方は多いですが、実際にはそう単純ではありません。退職後1年目は、前年の収入をもとに課税されるため、住民税や国保が高額になる傾向があります。
前年所得課税の影響
住民税と国民健康保険は「前年所得課税」です。例えば、2024年に退職し、年収400万円あった場合、2025年の税額・保険料はこの400万円ベースで決まります。

この仕組みを知らずに退職後に驚く方がとても多いので、計画的に備えておくことが大切です。
固定費が増えるリスク
退職すると健康保険や年金の支払いも自己負担になり、固定費が一気に増えます。さらに住民税や国保も合わせると、年間数十万円単位で現金が必要になります。
特に住民税は分納や猶予を申し込まない限り、一括で請求されるケースが多いです。資金繰りを圧迫しやすいので注意しましょう。

国民健康保険を安くする方法
国民健康保険は前年所得で決まるため、退職直後は負担が増えがちです。ただし「任意継続」や「所得減免」を活用すれば、保険料を大幅に抑えられる可能性があります。
任意継続の利用
退職後も最長2年間は会社の健康保険を継続できる「任意継続被保険者制度」があります。任意継続にすると、前年所得が高くても保険料が一定額に抑えられる場合があり、結果的に国保より安くなるケースもあります。
ただし保険料の上限・下限は組合や協会けんぽで異なるため、退職前に比較しておくのがおすすめです。

所得減免申請
退職や大幅な収入減があった場合は、国民健康保険料の「所得減免」を申請できます。減免が認められると、保険料が半額近くになることもあります。
以下は減免の申請フローです。
- 市区町村役所で相談
窓口で減免の相談・申請書を受け取る - 必要書類の準備
退職証明書、収入状況がわかる書類など - 申請書提出
期限内に窓口へ提出 - 審査・決定
その場で可否と減免額が通知されることが多い
申請期限が決まっているため、退職後できるだけ早めに相談することをおすすめします。

👉 任意継続の詳しい解説はこちらも参考にしてください。
退職後の健康保険と年金はどうする?任意継続・国保・免除を徹底解説
住民税を安くする方法
住民税は前年所得課税なので、退職直後に収入がなくても高額な請求が届くことがあります。しかし、分納や猶予制度を活用したり、ふるさと納税を組み合わせることで負担を軽減できます。
分納・猶予制度
「一括で支払うのが厳しい」という場合は、市区町村役場に相談することで分納(分割払い)や納付猶予を申し込めます。
分納が認められると、毎月一定額を分割で支払う形になり、急な資金流出を抑えられます。猶予が認められれば、一時的に支払いを延期できます。

市区町村によって条件や手続きが異なるため、納付書が届いたら早めに相談しましょう。
ふるさと納税の活用
ふるさと納税を活用すると、翌年の住民税から控除を受けられます。自己負担2,000円を除き、寄付額のほとんどが税額から差し引かれるため、実質的に節税効果が得られます。
以下は控除の仕組みイメージです。
ふるさと納税をする
↓
寄付先から返礼品が届く
↓
確定申告で申請(またはワンストップ特例)
↓
翌年の住民税から控除(自己負担2,000円)
自己負担が実質2,000円で返礼品を受け取れるので、生活費の節約にもつながります。

年金・共済とのバランスを考える
退職後は健康保険や住民税だけでなく、国民年金の負担も発生します。資金が厳しいときは免除や猶予をうまく組み合わせ、同時に将来の備えとして共済制度も検討しましょう。
国民年金保険料免除
退職で収入が減少した場合、国民年金保険料の「免除・猶予制度」を利用できます。全額免除や一部免除が認められると、負担を大幅に減らせます。
免除期間も将来の年金額に一部反映されるため、未納にするより手続きをした方が安心です。

申請は市区町村役場の年金担当窓口で行います。退職後すぐ相談してみましょう。
小規模企業共済との組み合わせ
フリーランスになったら、「小規模企業共済」に加入することで将来の退職金を積み立てられます。掛金は全額所得控除になり、住民税や所得税の負担を軽減する効果もあります。
「いま支出を減らしたい」「将来も備えたい」両立を目指す場合、小規模企業共済は有力な選択肢のひとつです。

👉 小規模企業共済について詳しくはこちらも参考にしてください。
よくある質問Q&A
任意継続と国保どちらが得?
任意継続と国保のどちらが安いかは、前年の所得や扶養家族の有無によって異なります。
- 前年の所得が高い場合:国保が高額になりやすいため、任意継続のほうが安くなるケースが多い
- 前年の所得が少ない場合:国保のほうが安い場合がある
退職前に双方の見積もりを比較し、保険料を確認してから決めるのがおすすめです。
👉 任意継続・国保・年金の選び方をまとめた解説はこちらも参考にしてください。

減免はどこで申請する?
国民健康保険の減免申請は、お住まいの市区町村役所の国保担当窓口で行います。住民税の分納・猶予も同じく市区町村税務課が窓口です。
相談だけでも対応してもらえるため、支払いが厳しいときは早めに問い合わせてください。

まとめと次のステップ
退職後にフリーランスになると、住民税や国民健康保険の負担は想像以上に大きくなります。しかし、任意継続や減免、分納制度などを活用すれば負担を抑えることができます。
今回紹介したポイントをおさらいしましょう。
- 前年所得課税なので退職翌年は税・保険料が高い
- 任意継続と国保を比較して安いほうを選ぶ
- 国保の所得減免を申請する
- 住民税は分納・猶予で支払いを調整する
- ふるさと納税や小規模企業共済で負担軽減+将来の備えを作る
どの制度も「申請しないと適用されない」ので、早めの情報収集と手続きが重要です。

何から始めるか迷ったら、まずは市区町村の窓口に相談し、見積もりをもらうところからスタートしましょう。
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