小規模企業共済とは?基本の仕組み
小規模企業共済は、個人事業主や小規模法人の経営者が将来の退職金を準備するための共済制度です。運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が行っており、掛金を積み立てることで退職時などに共済金を受け取れます。
・掛金は毎月1,000円〜70,000円の範囲で設定可能
・支払った掛金は全額所得控除できる(節税効果あり)
・退職所得扱いで税制優遇を受けやすい

小規模企業共済は「自分で作る退職金」だとイメージすると分かりやすいよ。事業をやめるときだけでなく、廃業・死亡・老齢でも受取が可能なんだ。
制度概要
小規模企業共済は、個人事業主や会社の役員が廃業や退職などの「共済事由」に該当したとき、掛金に応じた共済金を受け取れる仕組みです。共済金は「一括受取」「分割受取」「併用」から選択でき、受取時の税制優遇が大きな特徴です。
対象者と加入条件
加入できるのは以下のいずれかに該当する方です。
- 常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主・会社役員
- 共同経営者(法人の役員・個人事業主の共同事業者)
加入には開業届など事業を営んでいる証明が必要です。
👉 フリーランスの節税全体像について詳しくは以下の記事も参考にしてください。
個人事業主・フリーランスの節税完全ガイド
メリットを徹底解説
小規模企業共済には他の制度にはない大きなメリットがあります。ここでは特に重要なポイントを2つ紹介します。
掛金全額所得控除
最大のメリットは、毎月支払う掛金が全額「所得控除」になることです。課税所得を大きく減らせるので、所得税・住民税の負担を軽くできます。

例えば月3万円を積み立てると、年間36万円が全額控除されます。税率20%なら約72,000円も節税できるんですよ。
この節税効果はとても大きく、毎年の納税額を安定的に減らせるのが特徴です。下の表でシミュレーションを確認しましょう。
月額掛金 | 年間掛金 | 所得税・住民税節税額(※税率20%の場合) |
---|---|---|
10,000円 | 120,000円 | 24,000円 |
30,000円 | 360,000円 | 72,000円 |
50,000円 | 600,000円 | 120,000円 |
70,000円 | 840,000円 | 168,000円 |
※税率は所得税10%+住民税10%で試算
退職金として受け取れる
もうひとつの重要なメリットは、積み立てた掛金を将来「退職金」として一括で受け取れることです。受取時は退職所得控除が適用されるため、税負担が大きく軽減されます。
例えば20年積立を続ければ、数百万円単位の退職金を準備できます。これはフリーランスや自営業者にとって大きな安心材料です。
デメリットと注意点
小規模企業共済は魅力的な制度ですが、注意すべきデメリットもあります。特に以下の2つは必ず理解しておきましょう。
中途解約のリスク
共済は長期利用を前提とした制度です。加入後すぐに解約すると、元本割れ(積立額より受取額が少なくなる)が発生するリスクがあります。

12カ月未満で解約すると掛金が戻らないので、短期利用は絶対に避けてね。最低でも数年は積み立てる覚悟が必要だよ。
資金拘束と手続きの複雑さ
掛金は基本的に途中で引き出せません。また、解約・受取手続きには書類準備や確認が必要で、他の積立制度より手間がかかる場合があります。
共済金を受け取る際の税制優遇を活かすためにも、あらかじめ計画を立てておくことが大切です。
👉 iDeCoのしくみや違いについて詳しくは以下の記事も参考にしてください。
iDeCoの始め方と節税シミュレーション|退職後フリーランス必見
掛金シミュレーションと受取例
ここでは小規模企業共済を利用した場合に、どれくらい積立ができて、どれだけ節税になるかをシミュレーションします。
月額掛金ごとの節税額
掛金は1,000円から最大70,000円まで自由に設定できます。税率20%の場合の年間節税額は下記のとおりです。

毎月の積立額を少し増やすだけで、年間の節税効果がぐっと大きくなるんですよ。
月額掛金 | 年間掛金 | 5年後の積立額 | 所得控除による節税額(税率20%) |
---|---|---|---|
10,000円 | 120,000円 | 600,000円 | 24,000円 |
30,000円 | 360,000円 | 1,800,000円 | 72,000円 |
50,000円 | 600,000円 | 3,000,000円 | 120,000円 |
70,000円 | 840,000円 | 4,200,000円 | 168,000円 |
※積立額は単純計算・利息考慮せず
共済金の受取パターン
共済金の受け取りは一括・分割・併用から選べます。受取方法によって税金の計算も変わるので、将来の収入計画に応じて選択しましょう。
- 一括受取: 退職所得として課税(退職所得控除の適用)
- 分割受取: 公的年金等の雑所得扱い
- 併用: 一部を一括、残りを分割で受取
特に退職所得控除は大きいので、一括受取で節税メリットを最大化する方も多いです。
👉 経費処理の基本について詳しくは以下の記事も参考にしてください。
フリーランスが経費にできるもの・できないもの一覧【2025年版】
加入手続きの流れ
小規模企業共済の加入手続きは、準備が整っていればそれほど難しくありません。ここでは必要書類と申し込みのタイミングについて説明します。
必要書類と提出先
加入には以下の書類が必要です。
- 小規模企業共済契約申込書
- 開業届の控え(個人事業主の場合)
- 法人の登記事項証明書(法人の場合)
- 本人確認書類(運転免許証など)
書類は最寄りの金融機関(取扱機関)か、中小機構の窓口へ提出します。金融機関では事前相談もできるので不明点を確認しておきましょう。

書類の不備があると手続きが遅れるから、提出前にしっかりチェックしておこうね。
申し込みのタイミング
掛金の引き落とし開始は、申込書提出の翌月以降になるのが一般的です。節税効果をその年の所得に反映させたい場合は、年内に加入手続きを済ませておきましょう。
他の制度との比較
小規模企業共済を検討する際は、他の積立制度との違いも把握しておくことが大切です。ここでは特にiDeCoと国民年金基金との違いを比較します。
iDeCoとの違い
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、将来の年金を自分で積み立てる制度です。掛金が全額所得控除になる点は共通していますが、受取方法や資金拘束に大きな違いがあります。
また、iDeCoは会社員・公務員・主婦・個人事業主など誰でも加入できる汎用的な制度ですが、小規模企業共済は個人事業主や会社の経営者だけが加入できる専門的な制度です。

iDeCoは60歳まで引き出せないけど、小規模企業共済は廃業や退職のタイミングで受取できるんですよ。
項目 | 小規模企業共済 | iDeCo |
---|---|---|
掛金の上限 | 月7万円 | 月6.8万円(自営業者) |
所得控除 | 全額所得控除 | 全額所得控除 |
受取方法 | 退職所得or年金 | 年金or一時金 |
中途解約 | 元本割れのリスクあり | 原則60歳まで引き出せない |
税制優遇 | 退職所得控除の対象 | 退職所得控除・公的年金控除の対象 |
このブログでは、個人事業主やフリーランスの方には小規模企業共済を優先して検討することを推奨しています。節税しながら退職金を積み立てられるのが最大の魅力です。
国民年金基金との違い
国民年金基金は国民年金に上乗せする公的年金の一種です。毎月の掛金は所得控除でき、将来の年金額が確定しているのが特徴です。
- 小規模企業共済: 退職金として一括受取も可能
- 国民年金基金: 原則として終身年金として受取
どの制度もメリットがありますが、資金拘束の期間や受取方法の自由度を踏まえて選びましょう。
よくある質問Q&A
所得が少なくても加入すべき?
所得が少ない年でも、小規模企業共済に加入するメリットはあります。将来の退職金を積み立てる意味に加え、事業が軌道に乗って所得が増えたときに掛金を増額できるため、節税効果を柔軟にコントロールできます。

将来のために「少額からスタート」する方も多いですよ。無理なく積み立てていくのがおすすめです。
解約したらどうなる?
中途解約すると、経過年数によっては元本割れが発生します。特に加入12カ月未満の解約は掛金が戻らないため注意が必要です。解約する際は中小機構や金融機関に相談し、具体的な受取額を確認してから手続きを進めましょう。
まとめと次のステップ
小規模企業共済は、退職金の準備と節税を同時に叶えられる貴重な制度です。特に個人事業主やフリーランスの方にとって、安定した将来設計を支える強力な選択肢になります。
一方で、中途解約のリスクや資金拘束の面も理解しておくことが大切です。メリット・デメリットを踏まえたうえで、無理のない範囲で活用を検討しましょう。

分からないことがあれば、制度に詳しい専門家に相談してみるのも一つの方法ですよ。
👉 退職金や節税のしくみを活かして、将来に備える一歩を踏み出しましょう。