退職後にやるべき手続きを全体把握しよう
退職後の手続きは「期限」と「優先度」が大事

退職したら、やることが多くて不安になりますよね。でも大丈夫。大事なのは「期限」と「優先度」を知っておくことです。
退職後は、健康保険や年金の切り替え、失業保険の申請、確定申告など、複数の手続きが必要になります。それぞれ期限が決まっているため、何を先にやるべきか把握するだけでも安心感が生まれます。
まずは「全部一気にやらなくて大丈夫」ということを覚えておきましょう。必要なタイミングで必要な手続きを進めていくのがポイントです。
ちなみに、健康保険と年金の切り替え、失業保険の申請は順番に決まりがないように見えますが、実務上は注意が必要です。たとえば健康保険や年金の切り替えでは「離職票のコピー」を添付することが多いですが、失業保険の申請では離職票の原本をハローワークに提出します。先に失業保険の手続きを行うと、離職票の控えをもらい忘れた場合、役所に提出する書類が足りなくなることがあります。
手続きを進める前に、離職票のコピーを必ず取っておくと安心です。順番を間違えると余計な手間や追加書類が必要になるので、退職後は「どの手続きで何が必要か」を整理してから行動しましょう。
まず全体スケジュールを確認しよう【時系列チェック表】
次の表では、退職後にやるべき手続きを時系列で整理しました。
※スマホでは横スクロールできます。
手続き内容 | 期限の目安 | 提出先・窓口 | 備考 |
---|---|---|---|
健康保険の切り替え | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村役所・協会けんぽなど | 任意継続 or 国民健康保険を選択 |
年金の切り替え | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村役所 | 国民年金・免除手続きを検討 |
雇用保険(失業保険)申請 | 退職後すぐ〜1年以内 | ハローワーク | 受給資格を確認 |
確定申告(必要な場合) | 翌年3月15日まで | 税務署 | 医療費控除なども確認 |
退職金の受給・税金確認 | 退職後随時 | 元勤務先・税務署 | 課税方法に注意 |

この表をもとに、「いつまでに何をやるか」をスケジュール帳にメモしておくと安心です。退職後は気持ちも不安定になりやすいので、先に整理しておきましょう。離職票のコピーも早めに用意してくださいね。
健康保険の切り替え|任意継続か国民健康保険か
任意継続のメリット・デメリット

退職後も同じ健康保険に最長2年間加入できる「任意継続」。保険料は全額自己負担ですが、保険証が変わらず手続きもシンプルです。
任意継続は、退職前に加入していた健康保険をそのまま使える制度です。メリットは「給付内容が変わらないこと」。一方でデメリットは保険料が倍になることです(会社負担がなくなるため)。
在職中に収入が多かった方は、保険料が高額になりやすいので注意しましょう。
👉 退職後の健康保険をどうするか迷ったら、こちらも参考にどうぞ。
退職後の健康保険と年金はどうする?任意継続・国保・免除を徹底解説
国民健康保険への切り替え方法
任意継続を選ばない場合は、お住まいの市区町村で国民健康保険に加入します。こちらは退職日の翌日から14日以内に手続きが必要です。
必要書類は「健康保険資格喪失証明書」「身分証明書」などです。保険料は前年の所得をもとに計算されるため、収入が多い人は保険料も高めになる点に注意しましょう。
👉 国民健康保険の手続きや選び方はこちらに詳しくまとめています。
退職後の健康保険と年金はどうする?任意継続・国保・免除を徹底解説
会社の保険証返却・加入手続きの期限
会社の健康保険証は、退職日までに返却する必要があります。返却しないと資格喪失後に医療費を全額負担することになってしまうので要注意です。
切り替え先の保険証が届くまでは、医療機関の窓口で「資格喪失証明書」を提示したり、いったん全額負担して後で払い戻しを受ける手続きが必要になります。
払えないときの減免申請も検討

収入が減って保険料が払えない場合、市区町村の窓口で「減免申請」ができます。あきらめず相談しましょう。
減免申請は「退職による収入減少」が条件になることが多いです。申請書類は自治体によって異なるので、必ず役所に確認しましょう。
👉 保険料の負担が重い方は減免制度の活用方法を確認しましょう。
フリーランスの健康保険料を安くする裏ワザ|任意継続・減免申請を徹底解説
年金の手続き|国民年金への切り替えと免除制度
国民年金への切り替え手順

退職すると厚生年金の資格がなくなり、自分で国民年金に加入する必要があります。
退職後は14日以内にお住まいの市区町村役所で「国民年金の加入手続き」を行います。必要書類は「年金手帳」や「離職票」などです。
加入しないままでいると、将来の年金受給額が減るだけでなく未納扱いになってしまいますので、忘れずに手続きをしましょう。
👉 国民年金への切り替えは以下の記事を参考にしてください。
退職後の健康保険と年金はどうする?任意継続・国保・免除を徹底解説
年金保険料免除・猶予制度の活用
退職後は収入が減るため、年金保険料を支払うのが難しい場合もあります。その際は「免除申請」「納付猶予制度」を活用できます。
免除や猶予を受けると未納扱いにはならず、将来の年金の受給権も守られます。特に20代・30代の若い世代には猶予制度が利用しやすいです。

免除の申請は毎年度必要なので、手続き期限(7月末までなど)もチェックしましょう。
👉 年金負担を減らしたい方はこちらの記事をチェック。
退職後の健康保険と年金はどうする?任意継続・国保・免除を徹底解説
税金の手続き|住民税・所得税・確定申告
住民税・所得税の支払いタイミング

退職後は税金の支払い方法も変わります。住民税は一括徴収か普通徴収、所得税は年末調整か確定申告で精算します。
退職時に住民税を一括徴収していない場合は、6月以降に納付書が送られてきます。所得税は年末調整で精算済みの場合と、退職後に確定申告が必要になる場合があります。
一見すると「最後の給料から住民税を一括徴収してもらったほうが手続きがシンプル」と思いがちですが、体調不良や特別な事情で退職した場合、納期がまだ到来していない分の住民税が免除になる可能性があります。安易に一括で払ってしまうと、本来不要な税金を負担することにもなりかねません。
まずは「自分の退職理由でどんな免除や猶予があるのか」を確認することが大切です。分からないまま処理を進めると損をすることもありますので、迷ったら市区町村の税務担当窓口に相談しましょう。
以下の表で支払いタイミングを確認しましょう。
税金種類 | 退職時に一括徴収される? | 退職後に支払う場合の方法 | 備考 |
---|---|---|---|
所得税 | 年末調整・源泉徴収で精算(原則) | 確定申告で精算(翌年3月15日まで) | 医療費控除・退職所得控除も確認 |
住民税 | 給与から一括徴収も可能 | 普通徴収(6月以降に納付書で分割支払い) | 退職理由によって免除や猶予の可能性あり |
確定申告が必要なケースとは
退職後に以下のようなケースに当てはまる場合は確定申告が必要です。
- 年末調整をしていない
- 医療費控除や住宅ローン控除を受ける
- 副業収入がある
確定申告は翌年の2月16日から3月15日までに行います。
👉 確定申告の判断基準や手順はこちら。
退職後の住民税・所得税を損なく払う方法|確定申告の手順と注意点
確定申告の期限と提出方法

e-Taxを使えば自宅から申告できます。書類提出が必要な方は税務署へ郵送または窓口持参しましょう。
提出方法は「e-Tax」「郵送」「税務署窓口」の3つです。マイナンバーカードがあれば電子申告が便利です。
👉 確定申告の具体的な進め方はこちらで解説しています。
退職後の住民税・所得税を損なく払う方法|確定申告の手順と注意点
雇用保険・退職金の受給手続き
雇用保険(失業保険)の申請手順

退職後に働く意思がある方は、失業保険の受給手続きを早めに進めましょう。手続きはハローワークで行います。
退職後に失業保険を受け取るには、ハローワークで求職の申し込みと受給資格の確認を行います。自己都合退職の場合は2カ月の給付制限があるので注意が必要です。
必要書類は「離職票1・2」「身分証明書」「印鑑」「通帳」などです。
👉 失業保険の申請方法や金額はこちらの記事で確認。
失業保険の受給条件・金額・期間まとめ|2025年改正の給付制限もわかりやすく解説
再就職手当・就業促進定着手当の流れ
早期に再就職が決まると「再就職手当」が支給されます。また、再就職後に一定期間働くと「就業促進定着手当」がもらえる場合もあります。
再就職手当は基本手当の残日数の60%~70%相当が支給されるため、金額も大きく、受給する場合は必ず条件を確認しましょう。

退職後すぐに再就職活動を始める方は、失業保険ではなく再就職手当をもらうケースが多いです。手続きのタイミングが重要です。
👉 再就職手当と定着手当の違いや申請方法はこちら。
再就職手当と定着手当は何が違う?退職後にもらえる2つの給付を比較解説
退職金と税金の注意点
退職金を受け取ったときは「退職所得控除」によって大きく税負担が軽減されます。勤務年数が長いほど控除額が増える仕組みです。
退職金は「分離課税」のため確定申告が不要な場合が多いですが、退職所得の受給に関する申告書を会社に提出していないと源泉徴収が高額になる場合があります。

退職金の税金は受給方法によって負担が変わります。不明な場合は税務署に相談しましょう。
退職後の生活費・資金計画を立てよう
支出シミュレーション【モデルケース】
退職後は「収入が減るのに支出は続く」ことが最大の不安材料です。特に家賃や税金、社会保険料は退職後もかかります。次の表で、生活費の目安を確認しましょう。
支出項目 | 20代1人暮らし | 30代1人暮らし | 30代3人家族 (扶養) |
30代3人家族 (共働き) |
30代4人家族 (扶養) |
30代4人家族 (共働き) |
---|---|---|---|---|---|---|
家賃・住宅ローン | 80,000円 | 90,000円 | 156,000円 | 156,000円 | 192,000円 | 192,000円 |
食費 | 35,000円 | 40,000円 | 70,000円 | 70,000円 | 85,000円 | 85,000円 |
水道光熱費 | 10,000円 | 12,000円 | 18,000円 | 18,000円 | 22,000円 | 22,000円 |
通信費(スマホ・ネット) | 8,000円 | 10,000円 | 20,000円 | 20,000円 | 22,000円 | 22,000円 |
国民健康保険料 | 18,000円 | 20,000円 | 25,000円 | 13,000円 | 30,000円 | 15,000円 |
国民年金保険料 | 16,520円 | 16,520円 | 33,040円 | 16,520円 | 33,040円 | 16,520円 |
所得税・住民税積立 | 12,000円 | 15,000円 | 20,000円 | 30,000円 | 25,000円 | 35,000円 |
その他支出(雑費・交際費など) | 25,000円 | 30,000円 | 40,000円 | 40,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
合計 | 204,520円 | 233,520円 | 382,040円 | 365,520円 | 459,040円 | 437,520円 |
※上記は一例のモデルケースです。
共働きの場合は、配偶者の手取り収入を加えた世帯収入と比較して負担感をイメージしてください。
住む地域やライフスタイルによって支出は大きく変動しますので、実際には家計簿や支出記録で具体的に確認しましょう。
足りない場合の支援策(生活福祉資金など)
貯金が不安な場合は、国や自治体の支援制度を検討しましょう。生活福祉資金や緊急小口資金など、一時的な生活費の貸付制度もあります。

支援制度は審査や条件がありますが、相談だけなら無料です。迷ったら社会福祉協議会に相談しましょう。
👉 退職後1年の資金計画はこちらでモデルケースを紹介しています。
退職後1年の資金計画シミュレーション|生活費・税金・給付金をまるごと整理
退職後の手続きに関するよくある質問
Q1:退職後すぐに再就職する場合も手続きは必要?
退職日から次の会社の健康保険・厚生年金に加入するまでは、健康保険と年金の切り替えが必要です。就職先が決まっている場合も、資格喪失や住民税の手続きは発生するため注意しましょう。
Q2:失業保険を受給中にアルバイトはできる?
原則として「就職活動をしている状態」が受給条件です。短時間のアルバイトは可能ですが、報告が必要です。無申告は不正受給になるので必ずハローワークに相談しましょう。
Q3:国民年金の免除申請はいつまでにやる?
免除や猶予申請は原則「毎年度必要」です。退職した年度の免除申請は退職後すぐ、市区町村役所で手続きしてください。翌年度以降も継続する場合は7月以降に改めて申請します。
Q4:退職後に健康保険証はいつまで使える?
退職日の翌日から健康保険の資格は喪失します。退職日以降に古い保険証を使用すると自己負担や返還請求が発生するため、使用しないように注意が必要です。
Q5:住民税を一括で払うか分割で払うか迷っています。
一括徴収は手続きがシンプルに済みますが、体調不良などやむを得ない事情で退職した場合、納期限が到来していない住民税が免除・減免されることもあります。迷ったら市区町村に確認しましょう。
Q6:退職金を受け取ったら確定申告が必要ですか?
多くの場合「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば分離課税扱いで確定申告は不要です。ただし未提出の場合は確定申告が必要になり、税額も高くなるので注意してください。
Q7:手続きの順番はどのように決めたらいいですか?
健康保険・年金の切り替えは14日以内、失業保険の申請は退職後すぐ〜1年以内が目安です。離職票を使う手続きが多いので、まずはコピーを取っておき、役所とハローワークに相談しながら順序を整理しましょう。

他にも不安があれば遠慮なく相談してくださいね。役所やハローワークは無料で相談できます。
まとめと今後のステップ
退職後は「やることが多い」「期限が決まっている」と感じて不安になりがちですが、一つずつ整理すれば大丈夫です。
まずは健康保険・年金の切り替えと失業保険の申請を優先し、次に税金や退職金の手続きを確認していきましょう。
支出をシミュレーションし、もし生活費に不安があれば支援制度も検討してみてください。生活費や税金の見通しを「自分の場合どれくらいか?」と具体的に知りたい場合は、Finnaに相談いただけます。
開業・フリーランスを考える方へ

退職を機に独立・開業を目指す方は、手続きや資金繰りの計画を早めに立てましょう。開業届や青色申告の準備が必要です。
👉 退職後にフリーランスを目指す方はこちらの記事を参考にしてください。
退職後にフリーランスになるなら|開業届と青色申告を一から学ぶ